車高と車重の増加が逆に走りの気持ち良さにつながっている走らせた瞬間、「マツダ3を超えた!」と感じた。噂のコンパクトSUV、CX-30の完成度はそれほどまでに高いものだった。そしてさらに付け加えるならば、「1クラス上のCX-5を超えたかもしれない」とさえ言える。 マツダ3と同じアーキテクチャを用いながらも、そう感じた理由の一番は、さらに極まった乗り心地の良さにある。 先に登場したマツダ3は、走り全体に漂う滑らかな感触と乗り心地の良さ、そして静粛性の高さで、欧州Cセグメントと同等以上の仕上がりと評価したが、今回のCX-30はそれをあっさりと上回った。理由は車高がマツダ3よりも約100mm上がったこと。そして車両重量も約50kg増えたことによる。 ご存知のように、クルマは車両重量が重いほどに乗り心地が良くなる。ボディの重さが、走りに重厚さや落ち着きを感じさせる要素として働くからだ。 加えてマツダ3よりも車高が高くなったことで、サスペンションのストローク量が増えたことは、路面からの入力を受け止める容量がアップしたような感覚をイメージすれば分かりやすいだろう。 これによってCX-30は、マツダ3同等の走りの滑らかさや静けさの中に、さらに優れた乗り心地の良さを加えて、クルマの動き全体に「豊かさ」が感じられるものへと進化を果たしたのだ。しかもそのレベルは、冒頭にも記したように「CX-5を超えている」と思えるものだ。 実際、CX-30の主査である佐賀尚人さんに話を聞くと、今回走りにおいて最も注力したのはまさにこの辺りの感触であり、「マツダ3と比べると、車両重量は増え、重心高が上がるので、ハンドリング面では不利な要素といえます。が、マツダ3同様の動的質感を徹底して追求した結果、乗る方によってはマツダ3を上回ると感じていただけるレベルに達することができたと思っています」と語る。 CX-30のボディサイズは全長4395×全幅1795×全高1540mmと、CX-3より120mm長く、30mm広く、10mm低い。そしてホイールベースが2655mmと85mm長いため、後席のニースペースに余裕ができる。そのサイズはまさにCX-3とCX-5の中間で、4人が快適に移動できる空間と、都市部でも扱いやすいボディサイズを持つ、マツダ期待の量販が期待できるモデルである。 今回そんなCX-30を、ドイツのフランクフルトで開催された国際試乗会で試乗した。ここでCX-30は走り初めの一般道を滑らかな感触を伴って走り出し、極めて自然な感覚で曲がっていく。そして速度域の高いアウトバーンでは、しなやかに路面に吸い付き、フラットな姿勢をキープする乗り味を見せてくれたのだ。 そして走り全体に、ドライバーの意のままに動く、極めて自然な動作が実現されていることに気づく。その感覚は、CX-30の乗り味、走り味がクラストップに位置すると断言できるほどだ。では、その他の部分ではどうだろうか? 2.0Lガソリンは6速ATとの組み合わせが非力さを打ち消す印象写真からご覧になってわかる通り、CX-30のデザインに関しては文句なしの圧倒的品質。内外装はマツダ3と同様にライバルを置き去りにするレベルにある。運転支援を含めた装備に関しても充実している。ならばCX-30は隙なしの1台…と思えるのだが、唯一残念なのがパワートレーンだ。 今回試乗したCX-30は欧州仕様で、2.0Lガソリン「SKYACTIV-G 2.0」にマイルドハイブリッドの「Mハイブリッド」を組み合わせた6速ATと、1.8Lディーゼル「SKYACTIV-D 1.8」の6速MTの2台をメインに、ディーゼルの6速ATも少しだけ試すことができた。 まず2.0Lガソリン+Mハイブリッド搭載モデル。これは欧州の馬力課税をクリアするためのエンジンで、このため2.0Lながらも最高出力は122ps、最大トルクは213Nmという控えめなスペックとなる。ちなみにMハイブリッドは24ボルトのマイルドハイブリッドで、始動時や変速時などにモーターがアシストを行なう仕組みとなる。 今年1月、アメリカにおいてマツダ3ファストバックに搭載された同エンジンを6速MTで試したが、高速巡航からの加速で非力さを露呈してしまい、あまりいい印象は受けなかった。では果たして今回、マツダ3より50kg重いCX-30との組み合わせでどう感じるか? 実際に走らせてみると、6速MTでの印象に比べて、6速ATとの組み合わせは、発進時や郊外を走ってみても、不満に感じるシーンは少なかった。6速MTとの組み合わせだと、シフトダウンからアクセルを強く踏み込むシーンが多いほど、非力さを感じてしまうが、6速ATなら、Dレンジに入れたままで、トルクバンドをキープするシフト制御により、アクセルを踏み込むシーンが減るので、非力な印象が薄れるのだ。ちなみにアウトバーンで100km/h走行時のエンジン回転数は、6速で1800~1900回転といったところである。 加えて日本ではマツダ3にも搭載される156psを発生するMハイブリッド無しの通常版「SKYACTIV-G 2.0」が組み合わせられるはずで、その点非力さについては気にする必要はないだろう。 ディーゼルの無反応感は気になるが今後の日本仕様に期待したい続いて乗った1.8Lディーゼルと6速MTの組み合わせについては、ガソリンエンジンでも触れた6速MTとの相性の悪さが目立つ結果となってしまった。MTの場合、積極的に自分の意思でギアを選び、シフトダウンしてアクセルを強く踏み込み加速するシーンが増えるため、どうしてもその度に非力さを感じてしまうのだ。顕著だったのは、5速や6速で走っている時に再加速のためにアクセルを踏み込んだ時で、アクセルを踏んでから、体感的に1秒くらい無反応を感じてしまう。 要はアクセルを踏んでから、ターボが効き始めるまでのタイムラグがハッキリと分かってしまうのだ。さらにMTの場合はAT以上に反応の良し悪しが出てしまうため、今回のCX-30ではモロにマイナス方向に影響が出てしまったのが残念だった。加えて言うなら50kg重い車重、さらにはおそらく日本仕様よりハイギアードな欧州仕様のギア比も要因になっているのだろう。 しかし、その後に少しだけ乗ることができた1.8Lディーゼルと6速ATの組み合わせの印象は、さほど悪くなかった。常に駆動力が持続するATの場合、アクセルを踏み込んだ際も、MTのような無反応感はなかった。ただ、それでも全体的にディーゼルらしい力強さがMTよりも明確にあるとは感じられず、CX-30のパワートレーンとして魅力的か否かと聞かれれば、答えはノーだ。 ちなみに1.8Lディーゼルエンジンは最高出力が116psで、最大トルクが270Nmとマツダ3のそれと変わらないため、重量が50kg重いCX-30ではさらに力が欲しくなる。となると、結論としてはさらにハイスペックな2.2Lのディーゼルが欲しくなるし、ガソリンエンジンにしてもCX-5に追加された2.5Lターボがあったら…と想像してしまうのだ。 最後にCX-30とライバルを比較してみると、少なくとも同じクラスにおいては国産車、輸入車問わずナンバー1と言えるのではないだろうか? パワートレーンに不足感はあるものの、CX-30の特に内外装デザインの質感や走りの滑らかさや乗り心地、静粛性は群を抜いており、トヨタC-HRやホンダ ヴェゼルはもちろん、レクサス UXでさえも凌ぐのではないだろうか? また輸入車ではルノー キャプチャーやジープ レネゲード、メルセデス・ベンツ GLA、そして日本未上陸のフォルクスワーゲン Tクロスなどと比べても、CX-30の完成度の高さは光るものがある。 こんな具合で、CX-30はマツダの最新作らしい高い完成度を垣間見せたわけだが、やはりマツダ3の時と同様にパワートレーンに不満を感じる今回の欧州仕様の試乗となった。とはいえ、日本仕様ではまた印象は異なるだろうし、さらにまだ試せていないが、SKYACTIV-Xとの組み合わせによって印象が好転する可能性は残されている。その意味でも今後の日本仕様の試乗に期待だ。 スペック【 CX-30 SKYACTIV-G 2.0 Mハイブリッド(欧州仕様) 】 【 CX-30 SKYACTIV-D 1.8(欧州仕様) 】 ※共に欧州参考値 |
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