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メルセデス初の電気自動車EQCの極上の走りと、幾つかの悩ましい課題

2019-10-10 07:00| post: biteme| view: 328| コメント: 0|著者: 文:五味 康隆 /写真:編集部

摘要: 高級車メーカーが本気で作った電気自動車 メルセデス・ベンツがエンジンを搭載しないピュアな電気自動車を日本で初めて発売した。車名は「EQC」で、EQはメルセデスの電動車に与えられたサブブランドだ。すでにプラグ ...

メルセデス初の電気自動車EQCの極上の走りと、幾つかの悩ましい課題

高級車メーカーが本気で作った電気自動車

メルセデス・ベンツがエンジンを搭載しないピュアな電気自動車を日本で初めて発売した。車名は「EQC」で、EQはメルセデスの電動車に与えられたサブブランドだ。すでにプラグインハイブリッドモデルの電動関連パワートレーンを「EQ Power」と名付けるなどブランドネームとしては使われていたが、完成車として初めてEQCが登場した。

先日開催されたフランクフルトショーでは、EQブランドのフラッグシップセダン「EQS」のコンセプトモデルがお披露目されたので、今後EQはCだけでなく、S、いずれはEなど、ラインナップ展開されていくはずだ。

EQCの外観はイメージ色のブルーが使われ、AMGのように押し出しが強いわけでも、ノーマルのメルセデスのようにエレガントでもない、未来的な印象を抱かせるツルリとした表面で、フロントフェイスも仮面をかぶったようだ。個人的には強烈な加速などのキャラクターに合わせ、もう少し立体的で自己主張が強くても良いのではと思うが、一目でEQとわかる。

EQらしさが最も現れていたのは乗り味で、今まで経験したことがないほど上質で滑らか。静かで力強く、回転振動もほぼない電動モーターを使った電気自動車を、高級車メーカーが本気で作ったらどうなるのか? EQCにはそれを具現化させた乗り味がある。

プラットフォームを流用したデメリットも存在

専用プラットフォームを起こさず、ガソリンモデルの「GLC」のものをベースにしたEQC。ボディサイズも全長4761×全幅1884×全高1623mmと近く、適度な室内の広さと扱いやすさを備えたSUVスタイルとなっている。

内装にも専用の加飾が施されているが、ダッシュパネルやセンターコンソールなどの全体構成はGLCそのもの。EVであることを感じさせるのは、センターモニターでパワーマネジメント関連の設定画面や表示画面が選択できることくらいだ。

さらに言えば室内スペースもGLCと変わらず、リアシートの足下にはセンタートンネルが残っている。ボディ剛性的には悪くないのだが、電気自動車らしいフラットなフロアじゃないのは残念だ。また、右折時などにAピラー周りの死角が多いという弱点も残されている。

ボディ下には80kWhのリチウムイオンバッテリーが搭載され、航続距離はカタログ値で400km。夏場の街中走行中心という条件で試乗した電費は意外に伸びず、実際には300km前後の航続距離と考えるのが現実的だろう。バッテリー容量は巨大でも、いささか航続距離が短いという印象を持った。

その最大の要因は、約2.5トンというヘビー級の車両重量にある。なぜそこまで重くなるのか? 大容量バッテリーもそうだが、既存のプラットフォームを流用しているのが大きいと思う。もちろん、バッテリーが高額で利益率が低い電気自動車を採算ベースに乗せる上で、専用プラットフォームを開発するコストまでは掛けられなかったというビジネス判断は評価できる。

航続距離は短くても80kWhに掛かる充電時間はそれ相応で、普通充電で13時間、急速充電(日本で一般的なチャデモの50kW)でも80分かかる。つまり、近距離移動メインか複数台所有者用としてメルセデスは割り切っているのだろう。

極上の乗り心地だが、航続距離などの弱点もある

ただし、2.5トンの車両重量は悪いことばかりではない。マイバッハやロールス・ロイスなど、重量級の車でしか得ることができない重厚で上質な走りを手にしているのだ。まるでタイヤからブロックがなくなったかのように路面を転がるというか、しっとり滑らかで、今まで体験したことのない感覚。大きな突き上げも的確に吸収してドッシリしている。

コーナーではヘビー級の重量が外側タイヤにかかるので、スポーティな走りは得意とは言えないが、高速道路の長距離移動や、街中移動では最高の乗り味をみせる。

ガソリンエンジン車で2.5トンという重量級のクルマをストレスなく走らせるには、V8ターボ以上が欲しい。そうなると相応にボディも大きくなるのだが、EQCは前後に1基ずつ搭載された電動モーターの合計トルクが、8.0L級ガソリンエンジンに匹敵する765Nmを発揮。その結果、ミドルサイズ級で超重量級の乗り味を得て、ストレスのない加速も両立するという、電気自動車ならではの世界があるのだ。

もちろん改善すべき点はある。価格は1000万円オーバーだし、瞬間的な最高出力は300kWと十分だが、常時出せる最高出力は115kWで、高速側の伸びは苦手だ。やはり電動モーターは、街中でこそ活きてくる。ただ、街中だと歩行者を見落とすAピラー周りの死角を改善したい。

重量級ボディは上質な乗り味を出すが、その重さが電気自動車の課題である航続距離を縮めてしまう。軽量化を狙ってGLCとのプラットフォーム共有をやめ、専用シャーシを起こすとなると、価格はさらに上がり、採算が合わないという悩ましい現実が待ち受ける。このままのパッケージなら、一般ユーザー向けにはガソリンモデルのGLCのほうが完成度が高いだろう。

こうした悩みを目の当たりにすると、メルセデス・ベンツでさえ、電気自動車に対してはまだ手探りの状態で、EQCで市場の反響を見ているのが理解できる。それでも、上質な乗り味をミドルサイズで実現したことには拍手を送りたいし、100年以上磨き上げてきたシャーシ技術があってこその完成度だ。ちなみにスポーティ路線で言えば、同じカテゴリーの「ジャガー I-PACE」の完成度に分がある。

大容量バッテリーの充電システム網整備も課題

最後に、メルセデスは自社充電ネットワークなどの構築には動いておらず、チャデモなどの急速充電などを含めた「NCS」という日本の充電ネットワークインフラを使う戦略をとっているが、この辺りも今後どのように大容量バッテリーに対応した計画を立てていくのか興味深いところだ。

一方、ネット販売への挑戦や、バッテリーの長期保証(8年もしくは16万km)、リセール価格を保証するクローズド型リースを用意するなど、電気自動車への不安を払しょくする販売体制は高く評価したい。

BMW「i3」が電気自動車ならではの運動性能を示し、テスラが電気自動車ならではの加速力を示し、このEQCが電気自動車ならではの乗り味を示した。これら全てを実現する夢のモデルの登場はいつになるのか? もしかするとそれがEQのフラッグシップモデル、EQSなのかもしれない。電気自動車の世界は、間違いなく活発になってきている。

スペック

【 EQC 400 4マチック 】
全長×全幅×全高=4761×1884×1623mm
ホイールベース=2873mm
駆動方式=4WD
車両重量=2495kg
モーター合計出力=300kW(408ps)
モーター合計トルク=765Nm
バッテリー=リチウムイオン(80kWh)
0-100km/h加速=5.1秒
最高速度=180km/h
航続距離=400km(WLTCモード)
サスペンション=前:4リンク式
        後:マルチリンク式
タイヤサイズ=前後:235/45R21(試乗車装着)
価格=1080万円
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