踏み込み量やトルク感が伝わるモーター音「わ、これは面白い!」 マツダの電気自動車のプロトタイプである「e-TPV」のアクセルを踏んだ瞬間、思わずそんな言葉が出た。e-TPVはそこにキッチリと作り込まれたマツダらしい感触を伝えてきたのだ。 アクセルを踏み込むと、踏み込んだ量とそこから生まれる力の大きさがわかるよう作られたモーターの回転音を伴って加速していく。しかもその様は究極の一体感ともいえるフィーリングを伴っていた。だからもうこの時点で、他のEVとは全然違う! と感じる。 そしてカーブでハンドルを操作すると、なるほどマツダの目指す世界観はここだったか! となった。e-TPVは「マツダ3」や「CX-30」を遥かにしのぐ落ち着きのある上質な動きを見せつつ、滑らかな感触を伝えながらしなやかにコーナリングしていったからだ。ドライブトレーンがモーターとバッテリーになったことで、マツダが目指す世界観が完成形に近づいたのだ。 試作車はボディを流用した関係でCX-30をベースにしたクルマに思える。だが、その中身はれっきとした新しい電気自動車のプラットフォームを用いているし、発売時には専用のボディが与えられる。しかしながらこの電気自動車プラットフォームは、実はマツダ3やCX-30と共通する要素が多い。これはどういうことか? 新世代プラットフォームは電動化ありきで開発された筆者は失礼ながら、今回のマツダの第1世代EVというのは、特に中国のEV政策などに向けて、間に合わせで作るようなもので、実際にはスカイアクティブGとD、スカイアクティブXという路線に注力していくのだろうと思っていた。しかしそれらは全て筆者の勝手な思い込みであり、マツダ3やCX-30も採用するマツダの新世代スモールプラットフォームは、企画がスタートした2015年時点で、電動化に対応したプラットフォームとして生まれたのだ。 バッテリーの搭載によって重量がかさんだり、強固なボディ剛性が求められるなど、様々な制約が生まれる電気自動車にも使うことを視野に入れた高性能な基本骨格を作り上げ、そこから内燃機関搭載モデルに派生させる手法をとっているのだ。 しかもe-TPVのキモは、今回試乗したプロトタイプこそピュアEVであるものの、シリーズハイブリッドやプラグインハイブリッド、レンジエクステンダーまでをカバーできるマルチな電動化技術を、当初から織り込んだプラットフォームになっていることだ。そしてここでモーターに組みわせて搭載されるエンジンこそが、マツダの魂ともいえるロータリーエンジンである。ロータリーと聞けば、胸を熱くする方も多いだろう。筆者もマツダの魂が電気の時代に、再び回転を始めるのだと思うとワクワクする。 高剛性ボディや新発想ペダルを採用今回のe-TPVは先に記したように、いってみれば新世代マツダの走りを究極的に突き詰めた存在でもある。 まずバッテリーを車体中央に搭載してフロア骨格を多方向に環状構造化することで、4輪対角に遅れなく力を伝達できるようになった。つまり、強固なフロアを築くことで車両応答を遅れのないものにした。 そしてユニークなのは「モーターペダル」。アクセルの操作に対して生まれる加減速に対する応答遅れを徹底して低減した上で、サウンドによってペダルを踏んだ際のトルクの向きと大きさを知覚できるようにすることで、極めて一体感のあるコントロール感覚が生まれた。ただし、減速方向の制御に関しては今回はあまり制御されておらず、今後さらにブラッシュアップされるらしい。 モーター駆動となったことで、Gベクタリングコントロールは制御領域が大幅に広がった。もともとGベクタリングコントロールこの電動プラットフォームで開発され、それを内燃機関のトルク制御で可能なものにデチューンしていた、と言う方が正しいだろう。 しかも今回はコーナリング後半のターンアウトでモーターの素早い反応を活かし、ハンドル戻し時のトルクアップも実現して後方への荷重移動を行う。さらにアクセルオフや降坂でも回生によるGベクタリングコントロールでさらに安定性を高めている。 アクセルやハンドル操作に対するクルマの動きはまさにシームレスという言葉が相応しい滑らかさで、この感触をずっと味わって走っていたいと思える。路面に心地よく吸着するような落ち着きと安心感があるのも特徴だ。開発陣もこのプラットフォームでEVを始めてみて、モーターとバッテリーを得たことが走りの質を大幅に進化させたことに驚いたという。 ただ一方で、この優れたフィーリングは、乗る人の感度次第で評価が変わる可能性もあると思えた。あまりに滑らかで自然、かつ無意識に優れた走りが得られるため、何事もなく乗れて記憶に残らない人がいるかもしれない。 あるいはパワーやトルクに期待する人には物足りなく感じるかもしれない。e-TPVは他のEVのように、0-100km/h加速タイムが圧倒的に速いわけでもなければ、強烈なトルク特性を持っているわけでもない。むしろ、そうした要素では勝負しない存在であり、目指しているのは人が一体感を感じられる優れた道具である。 35.5kWhのバッテリー容量は様々な検討の上で導き出したわけだが、スペック重視の傾向にあるEVの商品性の世界においては、この部分が指摘される可能性もある。 今度の東京MSで本命デザインがお披露目される今回のe-TPVは、「走る曲がる止まる」という部分の質に関しては、ある意味マツダにしかできない革命的な世界観を築くことに成功したといえる。実際、筆者も自分のクルマとして乗りたいと思ったほどだ。 何より、クルマ好きにとってはロータリーエンジンの復活が商品性の高さに直結している。マツダの魂を内包する電動化車両と考えただけで楽しいし、御神体ともいえるパワーソースが祀られたクルマは、どんどん味気なくなってくる新世代の自動車の中にあって、ロマンを感じさせる存在でもあるかもしれない。 わずか1時間半の試乗のためにノルウェーのオスロにまで飛んでくることに、当初はそこまで重要なことなのだろうか? とも思っていたが、実際にe-TPVに乗ってみて、なるほどこれは衝撃作だと感じた。今回はCX-30のボディを被っていたが、本番ではどんなデザインをまとったクルマになるのか? その答えは、今年の東京モーターショーで出すとマツダは明言している。 |
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