冬でも実走行100km。「FUN」は装備も充実軽商用バンのホンダ「Nバン(N-VAN)」に追加された電気自動車バージョンの「Nバンイー(N-VAN e:)」のプロトタイプ(ナンバープレートが付いていないだけで市販車と同じ)にクローズドコースで試乗した。 |あわせて読みたい| Nバンイーはエンジンと燃料タンクの代わりに、リチウムイオンバッテリーと電気モーターを搭載し、前輪を駆動する。バッテリーの総電力量は29.6kWhで、一充電走行可能距離は245km(WLTC)、普通充電は3.2kWなら8.5時間、6.0kWなら4.5時間で満充電となる。 急速充電にも対応していて、50kWなら30分で80%まで回復する。もちろん245kmというのはカタログ値であり、実際にはそんなに走行できないと考えていたほうがよいのだが、エンジニアによれば、例えば寒い時期に暖房をMAXで使って最大積載量で走行するなど、最悪の条件であっても100kmの実走行を確保できる総電力量を確保したという。 エンジン付きの軽自動車に最高出力64psのターボモデルと55ps前後の自然吸気モデルがあるように、Nバンイーにも同64psと同53psの2種類が設定される。e:FUN(4人乗り・64ps、291万9400円)を最上級に、e:L4(4人乗り・64ps、280万9400円)、e:L2(2人乗り・53ps、265万9800円) 、e:G(1人乗り・53ps、254万9800円)の4グレードが設定される。 |Nバンイー| e:FUNを除く3グレードは急速充電なしを選ぶことも可能で、その場合、11万円安い。CEV補助金はどのモデルも軽自動車の上限である55万円となる。加えて自治体ごとに設定される補助金が上乗せされるのは他の電気自動車と同様。商用車ながら装備が充実していて趣味性の高い軽乗用車としての用途が期待される最上級のe:FUNは電気軽乗用車の日産サクラ、三菱eKクロスEVを意識した値付けになっている。 >>NバンイーやNバンの内外装の画像を見る (次のページで圧倒的な加速を解説) #N-VAN #Nバンイー #N-VAN e: #EV #商用 #ホンダエンジン車を圧倒する加速性能や静粛性まずエンジン付きのNバンを走らせた後、64ps版のNバンイーを同じルートで走らせた。取材の都合でNバンが自然吸気版だったことを考慮しなければならないものの、60→80km/h、80→100km/hの加速を試すと、Nバンイーのほうが圧倒的に静かで力強かった。 仮にターボのNバンと比較していたら静かさ、力強さともにその差は多少縮まっただろうが、そういう次元ではなく、エンジン付きの軽自動車ではあり得ない静かさと力強さだ。Nバンよりも車両重量が約200kg重いのだが、最大トルク162Nmの力がそれを感じさせない(Nバンターボは同104Nm)。 日産サクラで感じたのと同じ“脱・軽自動車レベル”の静粛性と加速力を思い出した。あちらは同195Nmと最大トルク値はより大きく、バッテリーが小さいこともあってNバンイーよりも車重が軽いが、Nバンイーは商用車ということもあって最終減速比が大きいため、加速力は同等と感じた。 >>NバンイーやNバンの内外装の画像を見る (次のページで圧倒的な加速を解説) |Nバン| Nバンイーに向いている人と向いていない人さまざまなコーナーと路面のうねりなどが組み合わせられたハンドリングコースも走らせた。最重量物のバッテリーが床下に敷き詰められていることもあって、最初のコーナーで低重心であることを感じさせる。大げさではなく背高なワゴンを運転している感覚がまったくない。楽しい。楽し過ぎる。 ただし寿命を重視した商用車向けタイヤが装着されていて絶対的なグリップ力が低いので調子に乗ってはいけない。遊びに使っても楽しめるものの、遊びのために開発したクルマではない。 日本の電気自動車の得意技である給電機能も完備。コンセントから1500Wの電力を取り出せるし、災害時などに外部給電器を繋げばより大きな出力の電力も取り出すことができる。給電で電力を使い切って車両が文鎮化してしまわないように、電力残量が設定値に達すると給電を停止する装置も付いている。 すべての電気自動車に言えることだが、Nバンイーもすべての人に向いているわけではない。まず大前提として基礎充電が可能な環境(自宅や職場など日常的に駐車する場所で普通充電ができる環境)にある人でないと真価は発揮できない。 日々の走行距離が定まっておらず、急に遠出したくなるような人にも向いていない。でもそうじゃない人たちにとっては最高のツール兼おもちゃになると思う。 >>NバンイーやNバンの内外装の画像を見る (終わり) |
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