前回改良から1年待たずにマイナーチェンジトヨタの「GR86」、スバルの「BRZ」は、7月12日に一部改良が発表された。 いずれも昨年の9月22日に一部改良が実施されたばかりなので、それから1年も経たないうちに矢継ぎ早の改良を実現したことになる。そんな両モデルの新旧乗り比べができる試乗会が、富士スピードウェイのショートコースで開催された。 GR86とBRZはトヨタとスバルの共同開発車ではあるが、走りの「味付け」に関しては各々の開発チームが独自に行い、それぞれの個性を際立たせている。 それは初代モデルのZN6/ZC6型の時から続く伝統で、86がテールハッピーなヤンチャ坊主なら、BRZは安心・安全志向のオトナなスポーツカーという印象。基本的にその路線は現行モデルのZN8/ZD8型にも踏襲されている。 そして今回の新型も両社の開発陣が、あれをああしたい、これをこうしたいと改良の要望項目をリストアップして議論がスタート。偶然なのか必然なのか、リストはかなり似かよった内容だったそうで、最終的に採用された各車4つの改良項目も、期せずしてよく似た内容となった。 >改良版GR86&BRZのフォトギャラリーはこちら |あわせて読みたい| >>トヨタ GR86の価格やスペックはこちら モータースポーツの現場の声をフィードバックまず、モータースポーツからのフィードバックを強調するGR86の進化点から見ていこう。 ・MT車のスロットルレスポンス向上 以上4点の改良項目は、サーキットだけでなく、ラリーやダートなど、さまざまなモータースポーツの現場でユーザーにインタビューを行い、ここをこうして欲しいという生の声を拾った結果、反映されたものだそうだ。 例えば1番目のスロットルレスポンスは、「ヒール&トゥをした時に思ったほど吹けないから回転合わせがしにくい」という意見に対する改善でもあり、2番目の減衰特性は「未舗装路を走った時の弾かれるような挙動を抑え、接地性を上げて欲しい」という要望への答えでもあるという。 それらはモータースポーツの各シーンで速く走りたい、という明確な目的にピンポイントで応える改良と言っていいだろう。 お恥ずかしながら筆者は凡人ドライバーであるため、新旧モデルを富士ショートコースで乗り比べてみても、以上の2点に関しては正直「明らかに変わった!」と明言できるほど感じ取ることはできなかった。 ただ、リストの3番目に挙げられている電動パワステの改良は好印象で、操舵初期から剛性感があって安心感が高く、高速コーナーでもうひとつ大きく舵を切り込んでいった時のスッキリ感が感じられた。 これは特に女性ユーザーから「街乗りシーンでハンドルが重い」という意見があったことへの回答でもあり、切り返しや駐車時の操作が楽になっている側面もある。 >改良版GR86&BRZのフォトギャラリーはこちら |あわせて読みたい| >>トヨタ GR86の価格やスペックはこちら GR86は新旧どちらも十二分に楽しい今回は試乗車がすべてMT車だったため、4番目のAT車の改良点は体感できなかったが、これも「サーキットを走っている時にマニュアル操作でダウンシフトしても受け付けてもらえない」というドライバーの悩みに応える制御変更と言える。 新型は減速時に従来型よりもレッドゾーンに近い回転数(従来型より最大で1460rpm上昇)まで引き上げることが可能となり、よりコーナー手前で素早くシフトダウンできるようになっている。 総合的に考えると、新型の改良ポイントは、まさに筆者のようなヘタレドライバーやモータースポーツの初級者に少し寄せて、許容範囲を拡大したイメージ。言い方は悪いが、下手っぴの言い訳をたくさん聞いて、じゃあこんな感じだったらどうでしょうとトヨタ開発陣が真剣に出してきた答えだと思う。 ひとつ付け加えておきたいのが、比較対象として用意されていた従来型も運転して十二分に楽しかったということ。 筆者は「どっちもいいじゃん!」と脳天気に満足してしまったが、いやいや自分も新旧の微妙な違いがわかる男になりたい!と、ドライバーを奮起させ、育てることがGR86というクルマの最大の魅力。この短期間で一部改良を入れてきた姿勢に、86を文化として根付かせたいというトヨタの本気が垣間見られた。 それから、GR86は今回の一部改良と同時に200台限定の特別仕様車「RZ“リッジ グリーン リミテッド”」も発表。専用ブロンズホイールやインテリアが採用され、ザックス(ZF)製ダンパーとブレンボ製ベンチレーテッドディスクブレーキも装備されている。 外板色のリッジグリーンは新たに標準色として設定されるもので、この特別仕様車に限らず選択することが可能。かなり深い緑で、かつての「TE27 カローラレビン」を思わせるような渋い色味が印象的だ。 >改良版GR86&BRZのフォトギャラリーはこちら |あわせて読みたい| >>トヨタ GR86の価格やスペックはこちら あらためてGR86とBRZの違いを認識さて、次にスバルのBRZである。こちらもまずは4つの進化ポイントから確認していこう。 ・ダンパー減衰力特性の変更 ぱっと見ただけでも、1~2番目と4番目の項目内容は、GR86と共通していることがお分かりいただけるだろう。ただし、改良自体はスバルとトヨタでそれぞれ独自に行なっているので、中身までまったく同じというわけではないそうだ。 例によって、繊細な荷重変化を感じ取る精緻なセンサーが付いているわけでもない凡人ドライバーの筆者は、1番のダンパー減衰力特性の違いについては、正直よくわからなかった。 ただ、試乗した順番がGR86が先でBRZが後だったこともあり、両車の比較という意味ではBRZの方が四輪の接地感が伝わりやすく、圧倒的に安心して踏んでいけることは改めて強く実感させられた。 スバルの狙いとしてはよりスタビリティを重視し、フラットライドを実現する味付けにしているとのこと。メカ的なことで言うと、BRZもGR86もダンパーの内部部品を変えて減衰力の立ち上がり方を変えていると言う。 ただし、BRZの「STI スポーツ」に関しては、もともとSTIチューニング専用ダンパーを採用しているので、今回の一部改良の減衰力特性の変更には該当しない。その他の3点の改良はSTI スポーツにも適用されている。 >改良版GR86&BRZのフォトギャラリーはこちら |あわせて読みたい| >>スバル BRZの価格やスペックはこちら BRZのMTであれば新型をおすすめしたい電動パワステの感触が良かったということと、AT制御は試乗車がなくて体感できなかったということはGR86と同じ。だが、今回の一部改良におけるBRZ最大のトピックは、GR86には採用されていない、3番目のMT車専用「スポーツモード」の追加だろう。 センターコンソールに追加されたスイッチを押すと、これはもう効果テキメン。アクセルペダルの操作に対する追従性が極めてリニアな、気持ちのいいスロットルレスポンスを実現する。他のスバル車に採用されている「SIドライブ」ともまったく違い、非常に加減速のコントロールがしやすかった。 これにはスーパー耐久で培った知見が大きくものを言っているそうで、単純にアクセルを踏めばドーンとトルクが立ち上がるような制御ではなく、ワイヤー式のメカニカルスロットルのような素直な特性を追求したとのこと。 足裏の感覚とスロットルの開き方がぴたりとリンクしているようで、アクセルを開けた時の加速感だけでなく、抜いた時の減速感もこちらの意思にぴたりと寄り添ってくれるような感触を味わえる。 GR86に関しては、従来型も新型もどちらもいいと感じたが、BRZに関してはMT車を買うならスポーツモードが付いている新型の方が絶対的におすすめ。ちなみにSPORTモード使用時はアクティブサウンドコントロールの音量も高まり、気分を盛り上げてくれる。 最後にもう一点。地味な変更ではあるが、GR86、BRZともに新型にはデイタイムランニングライトが追加された。イグニッションオンで、かなり明るいデイタイムライトが常時点灯するため、昼間の被視認性が向上。安全性が高まると同時に、従来型のちょっとした見た目の違いを演出している。 (おわり) >改良版GR86&BRZのフォトギャラリーはこちら |あわせて読みたい| >>スバル BRZの価格やスペックはこちら |
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