“摩訶不思議”なスポーツタイヤーー通算368勝。 これはグッドイヤーがF1であげた勝利数であり、最多勝記録である。 日本グッドイヤーは3月1日、「EAGLE F1 ASYMMETRIC 6(以下、アシンメトリック6)」を発売した。F1の名が示す通り、同社きってのスポーツタイヤシリーズの新作である。 日本では、F1といったモータースポーツのイメージよりもオールシーズンタイヤを市場に広めた先駆者のイメージが強いグッドイヤーだが、近年はWECの「LMP2クラス」や「LMGT3」クラスにタイヤを供給するなど、モータースポーツの現場へと回帰しつつある。2024年のル・マン24時間レースでは、計39台の車両に約7250本(!)ものタイヤを供給したそうだ。 そんな同社のスポーツタイヤは、最上級でサーキット走行も視野に入れた「EAGLE F1 SUPERSPORT」を筆頭に、エントリースポーツの「EAGLE F1 SPORT」、ヤリスカップといったワンメイクレースにも採用される「EAGLE RS SPORT S-SPEC」がラインアップされるが、今回登場したアシンメトリック6は、運動性能や快適性を高次元でバランスさせた“いいとこ取り”のスポーツタイヤ。 そんなアシンメトリック6の実力を、一般道とテストコースでドライからウエットまで幅広くチェックした。初めに結論を言うと、スポーツタイヤとは思えない(良い意味で)“摩訶不思議なタイヤ”であった。 ◎あわせて読みたい: 第一印象は軽い。そして静か近年増え続ける電動車。エンジンの他に重量物であるバッテリーやモーターなども搭載され、クルマの車重は以前とは比べ物にならないほど重たくなっている。また、モーターによる瞬発的な駆動力も相まって、タイヤへの攻撃性が非常に高いため、生半可なタイヤではその性能を活かしきれない。 さらに、環境性能や騒音規制といった要件も年々厳しくなっており、それはスポーツタイヤとて例外ではないのである。 ◎あわせて読みたい: アシンメトリック6で一般道を走り出した第一印象は「軽い」である。 スポーツタイヤといえば、ある程度の重量感も持ってゴロゴロ前に進んでいくのがひと昔のイメージだが、アシンメトリック6では、クルマの動き出しがスポーツタイヤとは思えないほど軽やかで、タイヤが抵抗なくスーッと転がっていく感覚がある。 これは恐らく、新たに採用された「フューエルセービングテクノロジー」のおかげであろう。アシンメトリック6では、転がり抵抗改善のために軽量化と合わせて新樹脂配合のコンパウンドを採用。さらにサイドウォールをラウンド形状にすることで空気の乱流を低減しているという。 さらに、驚くほど静かなのもアシンメトリック6の特徴だ。否応にも静粛性が気になる電動モデルへの装着を見据え、前作より25%もパタンノイズを低減したとのこと。センターリブを細かくして共鳴音を低減し、ショルダー部にチャンファー(面取り)を入れることで静粛性を高めているそうだが、これがスポーツタイヤとは思えないほど静かなのだ。 軽くて静かというスポーツタイヤの常識を大きく外れているアシンメトリック6だが、少しペースを上げて走ってみると、高い剛性感でカッチリとしたフィーリングを感じる。恐らく高剛性も燃費向上に寄与するのだろうが、路面からのあたりは角が取れており不快感はない。 軽やかな走行感覚とカッチリとしたレスポンスで、ワインディングを気持ちよく流すのにうってつけのタイヤだ。それでいて静かで乗り心地も悪くないので、デートや家族とのドライブなどオールマイティに使える、まさに万能タイヤといったイメージである。 ウエット性能も進化、誰にでも受け入れやすい万能選手続いてテストコースでウエットブレーキングを含むウエット路を試す。 前作より3%ウエットブレーキ性能を向上させたそうで、スバル「レヴォーグ」を使って60km/hからのフルブレーキングを試した今回のテストでも、前作アシンメトリック5が軒並み15m前半の制動距離だったのに対し、アシンメトリック6では13m中盤に収まるなど、確かな進歩が感じられた。 またそのブレーキのフィーリングも、正確にピタリと止まったアシンメトリック6に比べ、前作アシンメトリック5ではズズズ……と距離が延びながらリアのスタビリティが不安定になるなど、止まり方の安心感も向上している。 続いてはウエット路でのコーナリングを試す。アシンメトリック6では、新樹脂配合コンパウンドを採用しトレッドゴムの柔軟性を高めているのだが、前作と乗り比べてみるとその違いは一目瞭然。アシンメトリック6ではより高い速度でコーナリングができる。 ただ、高い剛性とグリップ力とのトレードオフなのか、滑り出しの限界域での挙動はややピーキー。もちろん散水路という極めて特殊な条件下で電子制御をオフにした際のフィーリングであって、後日豪雨の中の高速道路を走ったが、排水性も高く安心して走ることができたということを付け加えておく。 最後にドライのスラロームや高速コーナーを試したが、ここでも高い応答性を感じることができた。サーキット向けハイグリップタイヤのようにネチャっとしたグリップ感はないが、Rのキツいコーナーでもしっかりと荷重を掛けて曲がれば、タイヤの鳴きや変なアンダーステアも出ずコーナーをクリアすることができる。 これは、負荷の荷重変動に対し接地形状を最適化する「ドライコンタクトプラステクノロジー」が効いているのだろう。路面に張り付くような感覚ではないが、一般道を気持ちよく流す分には、この高い応答性とグリップ感、軽快感のバランスが心地いい。それでいて高い静粛性まで手に入るのだから、これまでのスポーツタイヤの常識では括れない“摩訶不思議なタイヤ”なのである。 アシンメトリック6は「READY FOR ANYTHING(全てをあきらめない)」というキャッチコピーを掲げている。スポーツタイヤとて、乗り心地や静粛性、環境性能にも妥協しないグッドイヤーのタイヤ哲学を表しているという。F1の名前は掲げていても、スポーツタイヤの枠を超え誰にでも受け入れやすい万能タイヤだと感じた。 現時点で19サイズしかラインアップされていないのが残念だが、国産スポーティモデルや欧州のサルーン・ワゴンなどに乗っていて、サーキットは走らないけど快適に気持ちよく走りたい、そんなユーザーにピッタリな選択肢の1つになる。価格は読者諸兄に調べていただくとして、個人的には、せっかくのスポーツタイヤなので小さく控えめなロゴではなく、所有欲を満たすような演出がそこにあっても良いと思えた。 ◎あわせて読みたい: アシンメトリック6のサイズ一覧<サイズ一覧> (終わり) 写真:日本グッドイヤー |
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